Sep 25, 2011

「鳩ほど可愛いものはない」

送られて、庫裏を出ると、鳩がくううくううと鳴く。
「鳩ほど可愛いものはない、わしが、手をたたくと、みな飛んでくる。呼んでみよか」
月はいよいよ明るい。しんしんとして、木蓮は幾朶の雲華を空裏に擎げている。泬寥たる春夜の真中に、和尚ははたと掌を拍つ。声は風中に死して一羽の鳩も下りぬ。
(夏目漱石『草枕』)

 この鳩が「くううくうう」ではなく「くるっくぅ」とでも鳴いていたらもっと素敵だったのだが、そんなことはどうでも宜しい。夏目漱石『草枕』の「十一」が多分にミニマルな印象を与えるのは、「春」「夜」「星」「月」「空」「木蓮」「鳩」という唯でさえ強烈なイメージを孕む言葉が、「春」×5、「夜」×6、「星」×5、「月」×8、「空」×8、「木蓮」×6、「鳩」×7と、ひたすらに連呼・反復されることに因るだろう。冒頭で『トリストラム・シャンデー』について触れながらも、イメージからイメージへと連想で繋ぎ発散的に物語を形成していくわけではなく、少ないイメージの中に留まり続けることによって(留まり続けるために)収斂的に物語が紡がれるという三題噺染みた手順が興味深い。それはともかく、「和尚」という本作髄一の登場人物が活躍することだけでも「十一」はわくわくする。

Sep 18, 2011

Lachrimae Antiquae / John Dowland (performed by J. Savall)

John Dowland (1563 - 1626) was an English lutenist and composer. He is well known for his melancholic songs. The melancholia was so fashionable in the early 17th century, and his masterpiece, “Lachrimae Antiquae” was the most popular English song at that time.
I have mixed feelings about the relationship between the melancholy and the art. Although the melancholia might stir up a creative power, the art which reflects the melancholia itself (or the melancholic art) is prone to be vulgar. (… Does a melancholic person make a melancholic art?) But anyway, I need it right now.