ベルンハルト・シュリンク『帰郷者』(11/30)、ユーディット・ヘルマン『幽霊コレクター』(12/17)と、昨年末に立て続けに発行されていた松永美穂訳の内、未読だった『帰郷者』を読む。全篇にホメロスの『オデュッセイア』が縦糸のように織り込まれているのだが、とりわけ、アイデンティティを変えて戦争責任を逃れ、アメリカで学者になっているド・バウアーの講義としての、『オデュッセイア』への言及に興味を覚える。
オデュッセウスは家へ帰ろうと努力しているのではなく、(……)彼は自分の決心ではなく、神々の忠告に従って帰郷する。(……)オデュッセウスは本当の意味で帰郷したわけではなかった。彼はすぐにまた旅立たなければいけない。