昨年来、Judith Hermannの"Nichts als Gespenster"をのろのろと読み進めて来たのだが、12/30発行で松永美穂の訳『幽霊コレクター』が出ていたので、当然のことながら瞬時に飛び付いた。
その最初の短編「ルート(女ともだち)」は、「もうずっと前からの友だち」であるルートと「わたし」の、「アパートをシェア」していた頃と、引っ越したルートを「わたし」が「訪ねていったとき」を交錯させながら、ルートの恋した男ラオルと「わたし」の密会を描いている。
長年の女友達(必然的に妙齢)の現在と過去を行き来する手法に、安直ながらサリンジャーの「コネティカットのひょこひょこおじさん」を想起させられた。ラオルとの密会後に「本のなかに栞としてはさんだまま」だった昔のルートのメモを読むという結末も、エロイーズが「一年のとき」の思い出を語り「あたし、いい子だったよね?」と確認している場面で締め括る「コネティカット……」に通じるのではないか。もっとも「コネティカット……」のほうが格段に感傷的だが。
さて、それはともかく、ラオルに関する、
彼は見栄っ張りで(彼女はそう言って笑った)、ある意味子どものようなところもあるそうだ。彼はシェイクスピアの「テンペスト(あらし)」でキャリバンの役を演じ、毎晩観客を沸かせていた。
という描写で、またしても『テンペスト』のキャリバンに遭遇する。