"Brave New World"繋がりで、シェイクスピアの『テンペスト』を読む。「野蛮で奇形の奴隷」キャリバンの"The red plague rid you / For learning me your language!"(「疫病でくたばりやがれ、 / おれにことばを教えた罰だ。」(小田島雄志=訳))という穏やかじゃない科白にじんと来る。田村隆一の「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」(「帰途」)よりも何だか激烈だが、"your" languageという辺りに現実的な匂いもするわけで、プロスペローとミランダが漂着した島の現地人キャリバンとしては、実は、ただ単に植民地化政策の「暴力」の話をしているだけなのかも知れない。……しかし、そんな詰まらない解釈はどうでも宜しい。
Dec 30, 2008
Dec 29, 2008
My Dark Hour / Steve Miller Band
"Brave New World"という言葉のHuman Be-In(1967)以降の使用例として、真っ先に思い浮かぶSteve Miller Bandの3rdアルバム"Brave New World"(1969)を聴く。Steve Miller Bandと言えば、2ndアルバム"Sailor"に入っている猫なで声の名曲バラード"Dear Mary"がベスト・チューンだと常々思っていたが、久しぶりに耳にした3rdでは、Paul McCartneyが"Paul Ramon"名義でベースを弾いている最終曲"My Dark Hour"の、アウトロの(例外的とも言える)白熱ぶりにノリノリになる。
Dec 28, 2008
絵本の魔術師 エリック・カール展 ~『はらぺこあおむし』から最新作まで~
絵本の魔術師 エリック・カール展へ行く。大混雑だったので大半は足早に駈け抜けたが、比較的前が空いていた作品「赤い目をした灰色のマスク」は、じっくり観ることが出来た。単に私の斑点好みによるものかも知れないが、これはいい。
また以前、私は『はらぺこあおむし』について、「最後の3ページって本当に必要?」と漏らしたものだが(「はらぺこあおむし / エリック・カール」)、今回知った『はらぺこあおむし』の前身作『虫のウィリーの一週間』では、緑の虫がリンゴやナシ、チョコレートを食べて穴を開けるだけで、最後にチョウにはなったりはしない。すなわち、『はらぺこあおむし』とは、普通の変態譚を書こうとして、ついつい「はらぺこ」部分に興が乗ってしまった帰結ではなく、ほとばしる「はらぺこ」を「変態譚」の枠組に納めた作品なのだ。……ところで『虫のウィリーの一週間』の最終項に現れた巨大な緑の塊(チョウにならないウィリーのなれの果て)は、最高にチャーミングだと思う。
また以前、私は『はらぺこあおむし』について、「最後の3ページって本当に必要?」と漏らしたものだが(「はらぺこあおむし / エリック・カール」)、今回知った『はらぺこあおむし』の前身作『虫のウィリーの一週間』では、緑の虫がリンゴやナシ、チョコレートを食べて穴を開けるだけで、最後にチョウにはなったりはしない。すなわち、『はらぺこあおむし』とは、普通の変態譚を書こうとして、ついつい「はらぺこ」部分に興が乗ってしまった帰結ではなく、ほとばしる「はらぺこ」を「変態譚」の枠組に納めた作品なのだ。……ところで『虫のウィリーの一週間』の最終項に現れた巨大な緑の塊(チョウにならないウィリーのなれの果て)は、最高にチャーミングだと思う。
Dec 7, 2008
20世紀ポップ・ロック大全集 Vol.5 愛と平和のサイケデリック・ロック
どうやら、当方が『20世紀ポップ・ロック大全集 Vol.5 愛と平和のサイケデリック・ロック -ドラッグカルチャーとしてのロック-』を観る時は、やや心細くなった時らしい。このBBCドキュメンタリーは、ボブ・ディラン「雨の日の女」(1966)で幕を開け、ウッドストック・フェスティバル(1969.8)まで一気に高揚して行くと、雪崩落ちるようにオルタモントの悲劇(1969.12)に至る……という構成になっており、『俺たちに明日はない』(1967)と類似のカタルシスを与えてくれるのだ。
もう何十回となく観ているが、今回は1967年1月14日にサンフランシスコのゴールデンゲートパークで行われ、Allen Ginsberg、Gary Snyder、Jefferson Airplane、The Grateful Dead、Quicksilver Messenger Serviceらが参加した集会、Human Be-Inの会場アナウンスに心奪われた。曰く、
それはともかく、"Brave New World"という言葉のHuman Be-Inでの使用は、恐らくシェイクスピア『テンペスト』のミランダの科白が木霊しているのだろう。
ところで、字幕の日本語訳、"この素晴らしい新世界に諸君を迎え入れよう"はいいね。多分、通天閣上ってから、帰りに串カツでも食わしてくれるんだろう。確かに素晴らしい。
もう何十回となく観ているが、今回は1967年1月14日にサンフランシスコのゴールデンゲートパークで行われ、Allen Ginsberg、Gary Snyder、Jefferson Airplane、The Grateful Dead、Quicksilver Messenger Serviceらが参加した集会、Human Be-Inの会場アナウンスに心奪われた。曰く、
I would say this to all the members of the Establishment.字幕では、"体制側の者たちに告ぐ" "この素晴らしい新世界に諸君を迎え入れよう"なのだが、何とも甘美な響ではないか? 勿論、この甘ちゃんぶりにオルタモントの悲劇へと開かれた広い道を見出すのは容易い、が、しかし、この圧倒的な解放の一瞬を何に代えられようか!
We are happy and proud to have you in our brave new world.
それはともかく、"Brave New World"という言葉のHuman Be-Inでの使用は、恐らくシェイクスピア『テンペスト』のミランダの科白が木霊しているのだろう。
O, wonder!『知覚の扉』が流行していた時代背景からすると、当時の人には(客層からしても)、この科白も引用されているAldous Huxleyの同名小説(1932)が最も身近だっただろうが、皮肉にも、Aldous Huxleyの"Brave New World"は、優生学的な管理社会を扱った逆ユートピア小説で、"Soma"という副作用なしのお薬のお陰で、どの階級もみんな楽しい気分♪ なのだ。
How many goodly creatures are there here!
How beauteous mankind is! O brave new world,
That has such people in't!
(The Tempest (V, i))
ところで、字幕の日本語訳、"この素晴らしい新世界に諸君を迎え入れよう"はいいね。多分、通天閣上ってから、帰りに串カツでも食わしてくれるんだろう。確かに素晴らしい。
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