Feb 27, 2008

アルネの遺品 / ジークフリート・レンツ

ジークフリート・レンツの『アルネの遺品』を読む。「一家心中で一人だけ生き残った少年アルネは、父親の友人一家の新しい家族として迎えられる。けれども運命は彼にとってあまりに過酷だった。……」と扉の解説に早速書かれている通り、何ともいたたまれない物語で、「両親はぼくに、アルネの遺品を箱に詰めてくれないかと頼んだ。」と始まるこの小説は、遺品を見出すたびに在りし日のアルネがよみがえる、という体をなしている。しかし、注目しなければならない点は、アルネの思い出がほぼ時系列に並んでいるということで、間違っても終焉を引き寄せてしまう遺品を「ぼく」は初手から引いてしまったりはしない。「あの頃」を反芻する為には、遺品を箱に詰める順番だけでなく、父、妹、弟が部屋に入ってくる順番さえも、予め規定されていなければならないわけで、現在が過去を引き寄せるのではなく、過去が現在を引き寄せているのだ。